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「ゼログラビティ」レビュー。今まで映画館で見た映画で1番良かったかもしれない。

エンドロールが流れはじめて、やっと地面に足ついた気がした。大きく深呼吸して思わず酸素の存在を確認。普段から汗っかきの自分だけど、こんなにも手に汗握る映画はかつてなかった。2013年では間違いなくダントツ、今まで映画館で見てきた映画の中でも1番にランクする映画だったかもしれない。映画の枠を超えて、もはや「映像体験」という新ジャンル。※以下なるべくネタバレを防ぎながら書きます。

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1. 3Dの映像体験

元々3D映画は酔ってしまうから避けがちではあったが、この映画はゆっくり進むシーンも多いからか全く酔う気配もなかった。それどころか、今までの3D映画とは似つかない体験。「アバター」を最初見た時の奥行きも新体験ではあったが、それを軽々と超えてきた感。ゆっくりと地球の周りをいく衛生、目の前すれすれを飛んでくる宇宙ゴミ(スペースデブリ)、シャトル内を浮遊する道具、主人公から流れ落ち浮遊する涙、なにもかもが「わーすごい奥行き」の枠を超えて、まるで本当に目の前に広がってるような感覚。

(※少しネタバレあり 1つシーンを挙げるとするとスペースデブリが降り注いで宇宙船を次々と破壊してしまうシーン。無重力である故、加速度的に様々な方向へ爆発して飛んでくる機体の破片。被害がどんどん広がりをみせていく様子(ケスラーシンドロームと呼ぶらしい)が、本当に目の前で起きてるのではないかと錯覚してしまう程。もう1つ挙げるとすると、最後の方でとても印象的だったシーン。主人公ライアンがよろけながらも立ち上がり、足でレンズに向かって水をバシャっとかけるカット。水滴を残したカメラがゆっくりとティルトアップし主人公越しに映し出される空模様。細かいところだけど、そういうリアルさが重力の存在、ひいては命の重みまでもを演出していて、映画のストーリーとの距離をぐっと近づける。

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2. 恐怖を見事に表現した音響効果

3D技術だけではなく、それと同じくらい音響効果にも力が入っていた作品。徐々に効果音がクレッシェンドして緊張感が高まり、頂点まで達したと感じた瞬間、突然劇場を襲う無音。そして恐怖。ポップコーンを手にしたまま口に運べない。ネタバレになるので詳しくは書けないけど、中盤誰もが「だめー!」って思った瞬間に、再度訪れる無音。息が苦しいとか、空気がないとかではなく、作品に感情移入しすぎて、息をするのを忘れる。一種のマインドコントロール。劇中に多用されるサラウンド型音楽も空間の広がりを感じさせる。

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3. たった2人のキャスト

登場人物はたった2人。2人の卓越した演技力が襲いかかる極限状態をより一層際立たせる。

ジョージ・クルーニーが演じたベテラン宇宙飛行士コワルスキー。ユーモアに溢れたアメリカンジョークを混ぜつつお気楽ものを装いながらも、常に冷静、困った時にめちゃくちゃ頼れる男。まさに上司にしたいタイプ。

サンドラ・ブロックが演じたエンジニアのライアンは幾度とパニックに陥ながらも冷静さを取り戻そうとする。劇中にみせるライアンの心境の変化にも是非注目してほしい。前半、酸素の残量が少しずつ減りつつ、目的地までいけるのか、生と死を彷徨う場面。意識が朦朧とする中「そんな、酸素もったいないからしゃべらないでー!!」と本気で思ってしまう程、作品に入り込んでたのが今になって恥ずかしいくらい。

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4. リアリティーを体現するカメラワーク

宇宙独特のフレームレスな世界に浮遊するカメラがライアンとコワルスキーを3人称視点からうかがってるシーン。カメラが徐々に2人に近づき、気づけばシームレスにライアンの1人称視点へとダイブし、ライアンの見ている世界がバイザー越しに繰り広げられる。無音な宇宙の中響くのはライアンの呼吸と心拍だけ。太陽の光が繊細に当たる様子、地球に目を向ければ青く輝いているけど一時外に向けるとおぞましい程の闇。孤独感。またカメラがワイドに戻ったと思えば、深い闇に吸い込まれていく儚くちっぽけな人間。もちろん宇宙に行ったことないから「リアル」とか言うのは本来の意味ではないかもしれないけど、宇宙言ったらこんな感じなのか…と誰もが疑似体験できる演出の数々。

カメラワークとえいば冒頭に見せる10分強の長回し。監督のアルフォンソ・キュアロンはこの長回しが得意とのことだが、繰り広げられる音響と合わせて映像にぐっと引き込まれる。劇中でこの10分間に全ての状況説明がされ、以降説明的描写は一切でてこない。

小ネタではあるが、一瞬コワルスキーがカメラを横切った際、撮影クルーの映像が反射して映りこんでるシーンがある。これはアルフォンソ監督が実際に撮影クルーが宇宙空間まで行って撮影したことを表現した「意図的な間違い」とのこと。細かい演出にもこだわっている。

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5. 単純なストーリーを最大限に活かした90分

(※少しネタバレあり)

普通のハリウッド映画であれば、お客さんに分かりやすいように途中別のシーンを混ぜながら状況を説明するものだが、この映画では終止宇宙でのシーンのみ。国際宇宙ステーションISS内の様子や地球上から通信している人の様子などは劇中一切描かれない。にも関わらず映像だけでストーリーが広がっていく。はっきり言ってストーリー性を求める映画ではない。ストーリーだけだったら140字でまとめられるくらいだ。ただそのシンプルなストーリーを上記したような3D技術、音響、演出、キャスティング、カメラワークなどが最大限に生かしている。

ひとつ気になったのが邦画のタイトルは「ゼログラビティ」だが、原画のタイトルは「gravity」。確かに宇宙にいる間は無重力の為「ゼロ」をつけた方が一見正解に感じるが、例えば冒頭にも書いた、最後にライアンがよろめきながらも立ち上がり水滴がカメラに残って垂れていくシーン。帰還し「重力」を確かめることができて、その直後に重くフェードインする「gravity」の文字。タイトルの本当のメッセージを考えたらゼロではなく「gravity」の方が合っているとも感じた。

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まとめ

1966年、「2001年宇宙の旅」が上映された際、世界中で激震がはしったという。もちろんリアルタイムでは見てないものの、半世紀前の映画が今もなお人々を魅了して止まない。その劇中に主人公が宇宙へ投げ出されるシーンが描かれている為この映画とも通じるものがあるのだが、この映画もまさに、何十年後に「2013年にはこんなすごい映画が上映された」って語り続かれてもおかしくない映画だと思う。「ゼログラビティ」はまさに「2001年宇宙の旅」の21世紀アップデートバージョンではないだろうか。

これから見るという人の為に2つだけアドバイス。

① 3D版、間違っても2Dでは見ちゃダメ これは少しプラスにお金を払ってでも、絶対に絶対に3Dで見てほしい。できればIMAX。

② 中央、通常より少し手前の席 「ぁちょっと近いな」ってくらいがちょうどいい。周りを完全にシャットアウトして映像にどっぷり入り込める。かけこみでチケットを買ってしまうと良い席はまずないので、事前にネットで予約するべき。中央の方が3Dの映像も音響も左右均等に伝わってくるので、せっかくならベストな状況で見てほしい。

 

 

登場人物はたった2人。しかも40代から50代。舞台は終止宇宙空間。もちろん敵キャラなどでてこない。この映画はハリウッドでヒットする法則をとことん破ってるという。にも関わらず、全世界46カ国でナンバーワンを記録、世界興収600億円を突破。製作期間は実に4年半。映画史の歴史的瞬間に出会えるといっても過言じゃない作品。是非上映期間中に見て欲しいです。

 

 

追記:メイキングが公開されてました。こちらも是非↓

 

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